読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

ドナルド・トランプの「すばらしい新世界」:マニフェスト・デスティニ―を持つ国から「普通の国」へ

ドナルド・トランプの「すばらしい新世界」:

マニフェストデスティニ―を持つ国から「普通の国」へ

 

鈴木英輔

 政治家、政治評論家、政治学者、メディアの政治記者など政治プロセスにかかわるもろもろの所謂専門家といわれる人の予想をことごとく裏切り、共和党の大統領候補としての指名を確実のものにしたドナルド・トランプ氏。予備選挙の開幕以来、その暴言と破廉恥な政策主張は、トランプ氏に米国の政治に参画しようとする者にとって致命的と考えられている「人種差別者」、「女性蔑視者」、「ファシスト」などのレッテルを貼りつけてきたのにも拘わらず、トランプ氏の勢いは止めることができないと言われるほどです。トランプ氏の支持層はどこから来ているのか、なぜ政治状況の分析を本職としている専門家はなにを読み違えたのか、考えてみましょう。

 一つのヒントは「社会主義者」と言われている民主党候補のバーニー・サンダース上院議員が訴える政策とトランプ氏の主張がかなり重複していることです。そこにすでにトランプ氏の支持層が貧しく、教育レベルの低い労働者層に限られているという図式がもろに崩れます。NAFTA北米自由貿易協定)、TPP(環太平洋連携協定)などに代表される過度な経済ネオ・リベラリズムに反対する人とそれが象徴するリーマン・ショックの災禍と国内産業基盤の空洞化から生活の糧を失った普通のアメリカ人の怒りの爆発なのです。その怒りや不満の対象がその政策を推進・実践してきた所謂民主・共和両党の主流派である「エスタブリッシュメント」に向けられたのです。それに対して民主党のサンダース氏にしても共和党のトランプ氏にしても、いずれも「アウト・サイダー」(よそ者)なのです。「よそ者」の強さは何といっても体制側の持つ既得権益とあまり関係がないが故に、逆に既存の政策を否定し、根本的な疑問を提起できる立場にいるということです。

 

I.

   党派を問わず米国の主流派は建国以来の天命、「明白(マニフェスト)な(・)天命(デスティニー)」(Manifest Destiny)の成就に向けて西へ、西へと邁進することでした。独立宣言にあるようにアメリカ合州国は自由と平等と幸福の追求は天賦の権利であり、その為に独立したのだという信念と誇りが米国を特別な、例外的な国にしていると自負し、その天命を成就する責任があるというのです。その天命とは、自由と平等の原則の擁護であり、米国型民主制度の普及と実践、それらの原則に則った新しい「世界秩序」の構築なのです。米国が国際政治場裡に登場した19世紀初頭からの米国の西半球での米国のとった対外政策にも表れています。モンロー主義とか孤立主義と言われる外交政策ですが、そのもとは「西へ、西へ」と国土を拡張しながら先住民の掃討を繰り返して太平洋に到着する間の権益独占時代の米国単独行動主義の全盛期の話です。米墨戦争(the Mexican-American War, 1846-48)を以って国内的領土制覇は終了しました。「孤立主義」の時代と言われたアメリカの国内領土拡張も、自国の裏庭である中南米での米国権益の拡大も、「孤立主義」ではなく、建国以来のマニフェスト・デスティニーの追求だったのです。モンロー主義は、米国はヨーロッパの出来事に口を出さないから、ヨーロッパも西半球の出来事に口を出すな、という相互不干渉主義だったのです。米国にとって、当時は米州以外の地域に干渉・介入するだけの国力も余裕も持ち合わせていなかったのですから当然な選択だったのです。

 南北戦争(1861-1865)という内戦のために海外進出に後れを取った米国は、米西戦争(1898)を経てスペインからフィリピンを獲得したことにより、モンロー主義は事実上幕を下ろし、米国の利益を積極的に保護・拡大するための清国に対する「門戸開放」政策へと変容していきました。その「門戸開放」通牒(1899,1900)も清国での列国に対する「機会均等」、清国の「領土保全」という新たな理念を国際政治場裡に導入したのです。このような独立宣言にある理想を追う米国の政治理念は不戦条約を生み、国際連盟国際連合の設立、世界人権宣言の採択へと第一次、第二次世界大戦後の世界秩序の構築に多大な貢献を築き上げてきたのです。もちろん、その貢献は米国が「移民の国」として様々な国からの平時の移民、戦禍や災害時の難民を受け入れ、多くの才能の持ち主が米国の繁栄を担う人材として成長していったことがアメリカの国力の一端を担っているのは否定できません。その膨大な国土と国力が世界最大の経済大国を造り出し、世界最大の軍事大国としてアメリカのマニフェスト・デスティニーの成就を担保しているのです。  

 

II.

 トランプ氏の予備選開始以来の主張・暴言は人種差別に基づいた反移民、反自由貿易、女性蔑視・嫌悪などから始まり、民主主義の移植のための「レジーム・チェンジ」への反対、同盟国に対する責任分担の要求、国際協調の軽視など様々ですが、その全てが民主党、共和党の主流である国際派リベラル理念とは真っ向から対峙する主張なのです。特にオバマ政権下で執られてきた「アメリカは世界の警察官ではない」という基本外交政策とは完全に一線を引いており、トランプ氏の主張は世界最強の軍事大国としての地位を回復するところにあります。その点だけが共和党「エスタブリッシュメント」との唯一の共通項なのです。強いアメリカの再創生のために経済力の蘇生を訴え、「アメリカ第一」を挙げ、あたかも保護貿易を支持するような政策を提唱しています。つまりトランプ氏の進めているものは、反自由貿易協定、反世界貿易機関で、基本的には米国の政財界の「エスタブリッシュメント」のコンセンサスである新自由主義を否定するような言動を発しています。自由貿易協定による安価な労働賃金、設備稼働費の削減を求めて海外の開発途上国へ移転する米国産業とその結果としての産業基盤の空洞化による失業者の増大のみならず、税収の減少による国庫の縮小を阻止しなければならに、と訴えているのです。

 安全保障の分野でも、「世界の警察官」としての役割を自ら放棄した結果、米国は同盟国からも米国のコミットメントに対して不信感を募らせている、と世界の米国に対する信用・信頼性が以前より確かなものではなくなったと訴えているのです。その証として挙げるものには、ロシアによるクレミア半島接収、ロシアの手によるウクライナ内戦、イラク戦争後の混乱と「イスラム国」の出現、チュニジアに始まる「アラブの春」以降の北アフリカの政変、シリア内線、中国による南シナ海の違法な占拠など、第二次世界大戦後の世界秩序を構築してきた主権の尊重、領土不可侵、基本的人権の尊重などという普遍的な価値・原則がもはや有効な行動規範となっていないという実例です。トランプ氏の主張の底辺に流れるのは、アメリカが牽引してきた普遍主義に対する基本的な懐疑的評価であり、新自由主義のもとにグローバリゼーションを推し進めてきた結果は、一部の金融・IT関連産業などを除けば、米国の産業基盤を弱体化させ、総合的な経済力縮小と台頭する中国やその他の諸国との相対的な地位の低下をもたらしたことが、アメリカの国益であったのかという苛立ちと不満なのです。 .

 「イスラム国」と自称する非惨で非情な犯罪組織が第一次大戦の戦後処理としてサイクス・ピコ協定の下で創りだされてきた国境を消し去り、自らのデザインで新たな国造りを狙っていることも、現在進行している領土に関する「戦後国際秩序」が崩れ始めている大きな流れの一環なのです。今、1945年に国連と共に創られた「戦後国際秩序」は徐々に崩壊し始めているのです。その証として国連を始めとして安保理の五大国も、EUも、誰として激化する国際問題に対して有効的な解決策を提示できていないことを指摘しているのです。

 「戦後国際秩序」が徐々に崩壊し始めている、というその発端は1989年に起きたベルリンの壁の倒壊に始まって、1990-1991年に起きた東西ドイツの統合とソヴィエト連邦の瓦解という一連の劇的な出来事です。これこそが「戦後国際秩序」の創造に関する基本的な「了解事項」を破棄したのです。ただこの劇的な事件がヨーロッパで起きたことにより「冷戦」の終焉という意味に取られがちでしたが、もっと根本的なことは、第二次大戦の戦後処理として出てきた新たな国境画定に関する基本的な理解を崩したという事実なのです。この冷酷な事実は、ヨーロッパという一つの地域のみに限定できるものではなく、同じような戦後処理としての新たな国境画定に関する基本的な理解は地球上の他の地域にも存在しているわけです。日本の取り巻く国際環境を考えればすぐ分かるでしょう。中国、ロシア、韓国、さらに南シナ海に関する所謂「領土問題」はまさに、「戦後処理としての新たな国境画定に関する基本的な理解」に基づき線引きがされてきて現在に至っているのです。習近平が「中華民族の偉大なる復興の実現」が「中国の夢」であると断言し、南シナ海全海域は中国のものであると豪語するのも、この戦後処理にまつわる基本的な理解が崩れたという事実を認識しているからでしょう。

III.

 グローバリゼーションの波は、一つの国家の生存にとって領域を拡大することが安全保障や経済力の維持に必要であるという原理を無効なものにしました。自由貿易の拡大と浸透により、小さな領域と資源も乏しい領土だけでも「都市国家」としてグローバル経済の中で堂々と競争していく力をつけることが可能になりました。それでも、冷戦の終焉とソ連の崩壊後に益々領域を拡大していったEUこそは現代版のアナクロニズムの象徴でしょう。EUが第四の「神聖ローマ帝国」であると見なせば、その領域の拡大を考えれば今の「イスラム国」と自称する「私」個人の犯罪集団としての非国家組織が目指すオスマン・トルコ帝国への回帰という目標と似たようなものでしょう。もっとも、より自由な独立国となった東欧の諸国が次々とEUに加盟して行ったのは統制経済から市場経済へと移行するプロセスの中で発生する危惧と不安を払拭する手段としての“集団”への帰属による“安心感”でしょう。無節制に拡大したEUはその構成国の期待が満たされない場合には、南北ヨーロッパ、東西ヨーロッパの構成国の不協和となって加盟国それぞれの国内問題として表面化してきます。現在起きている移民排斥運動はそのひとつの最も顕著な例なのです。 

 このような現実を踏まえて、トランプ氏はアメリカが軍事的に世界最強でなければ国際の平和も安全も保つことができないと訴えているのです。「世界の警察官」として立派に職務を遂行したくても、世界最強の軍隊を維持することはお金がかかるのです。そこでトランプ氏が提案するのは、米国の軍事力に国防を依存する同盟国は米軍の駐留費を負担するように、という駐留費支払い要求です。言ってみればサーヴィスの対価を払えという、ごく普通な合理的な話なのです。それを同盟国である日本に、韓国に、さらにNATOの加盟国にも要求しているのです。まして、それが嫌なら米軍を撤退させるから、自国の防衛は自分でどうぞお好きなように、というのです。 今まで米国が米軍を世界いたるところに展開・配置してきたのは、増大する全体主義共産主義の脅威から自由主義・民主主義を護るという大義のためでした。自由・民主主義こそ普遍的な価値であり、その普遍的な価値を守り、普及することこそ米国の国益であるという確信です。それこそが建国以来の伝統であるマニフェスト・デスティニーの追求なのです。1991年に起きた湾岸戦争を考えてみましょう。サダム・フセインイラク軍のクウェート侵攻に対して多国籍軍を率いて勝利した米国です。その時は、ブッシュ大統領(父)がソ連邦崩壊後の“New World Order” (新世界秩序)を創り出したと称賛されたものでした。

 それなのにトランプ氏は民主主義の普及や民主制度の移植などという政変を通じての民主化を否定します。イラク、リビヤ、シリアなどでの米国の介入がもたらした混沌とした政治状況は何ら米国の国益になっていないと断言するわけです。それでも、「イスラム国」のようなアメリカの政治理念を根本的に否定するような勢力に対しては断固として戦うことを鮮明にし、オバマ政権のシリア内戦に取り組む姿勢や「イスラム国」に対する戦争の遂行方法が生ぬるいと批判して、「強いアメリカ」を前面に出すように要求しています。

 トランプ氏の主張は「孤立主義」を提唱しているのではなく、アメリカの国益にならなければ、自らの主義主張に基づいて、つまり自由平等、民主主義の拡散などという普遍主義を基準にして外交政策の意思決定を執るべきではない、と言っているのです。行動の基準は、「よきサマリア人」になることではなく、「アメリカ・ファースト」、つまり国益になるか否かという「アメリカ第一主義」だというのです。但し、日本の「一国平和主義」と違って、世界最強の軍事力と世界を牽引する指導力を兼ね備えた「強いアメリカ」の下で世界平和は維持される、と主張するのです。従って、トランプ氏の描く外交は「孤立主義」などというものではないのです。基本的には、米国は再び「世界の警察官」としての役割を果たすことには何ら疑いはないのです。それも選択的に、アメリカの国益を優先してです。マニフェスト・デスティニーを追うことを米国の責任と見なさず、もっと冷酷に自分の国の利益をリアリスティックに分析して行動をとるべきだと主張しているのです。これがトランプ氏の「すばらしい新世界」なのです。彼は、建国以来アメリカ独自の政治思想であるマニフェスト・デスティニーの呪縛から初めて解放された大統領に成るのです。

IV.

 この現実主義者トランプ氏の以上のような基本政策が日本に与える直接的インパクトは日米関係の抜本的な再吟味を必要とします。トランプ氏の要求は単に在日米軍駐留費用の全面的負担のみならず、集団的自衛権の行使に関して、その全面的適用を要求していることです。その核心的問題を一口で言えば、日本は自力で自国を守る意志があるのかということです。この答えは、今までのように「誰が大統領になっても、日米同盟は不動不変である」などと言って収まる問題ではないのです。端的に言えば、トランプ氏が提起した問題は、日米安保体制が創設された時点からの懸案なのです。

 旧日米安保条約の前文に「・・・直接及び間接の侵略に対する自国の防衛のため漸増的に自ら責任を負うことを期待する」と記し、ヴァンデンバーグ決議が要求する米国が結ぶ安全保障条約の必須要件である相手国の「継続的な自助と相互扶助」に関する防衛努力を満たすものと装ったのです。しかし、憲法第九条第二項の存在はその核心的懸案の解決を阻み続け、日本の国防政策を根本的に歪なものとして創り上げて現在に至っているのです。

 その結果、敗戦後の法・政治思想状況下で日本の国を自ら守るという国民的コンセンサスも、有事の際にその防衛行動の意思決定を実施に移すメカニズムも存在しないのが現実なのです。世界的な戦略家エドワード・ルトワック氏が断言するように、「日本は国家安全保障面でアメリカから独立していない」からです。まして、日本国憲法の前文にある「平和主義」と第九条の「不戦」と「非武装」を守るという、いわゆる「護憲原理主義者」は、日本を永久に敗戦国として米国に従属させるという米国の対日政策を代弁しているのです。

 残念ながら、日本の政策論争には、「自衛権」の保持を認めながらも、その権利を行使するのにどのような手段をとるかという問題に真摯に向かい合ってこなかったのです。ルトワック氏が指摘するように「最も致命的なのは、日本が実際の行動を始める前に、アメリカに頼って相談するというパターンだ。もちろん日本政府がアメリカに事実を伝えるのは重要だが、相談してはならない。それでは『日本がアメリカに助けを求めている』という形になってしまうからだ」と言います。なぜそうなるかといえば「日本が自国の安全保障をすべてアメリカに依存する」からであって、その結果、本来日本の責任である自国の島嶼防衛すら自分でできないのは、日本が独立した機能をもたないからです。これが平和ボケした日本の「楽園」の姿なのです。    

 福澤諭吉がいみじくも言ったように、「一国の独立は国民の独立心からわいて出る」のです。その独立心を喪失した国がどのような末路を迎えるのか百田尚樹氏が著した『カエルの楽園』は端的に示しているのです。

V.

 以上のようにトランプ氏の主張は共和党の主流派である「エスタブリッシュメント」を真っ向から否定するものですから、共和党予備選挙を唯一人勝ち抜いてきた候補者であるのにも拘わらず、その共和党の重鎮を含め党執行部からの支持や協力をなかなか勝ち取ることができないでいます。今年11月の大統領選挙での民主党の候補者はニューヨーク州選出の上院議員を経て国務長官を務めたクリントン元大統領の妻であるヒラリー・クリントン氏になることが確実視されています。民主党はこの8年間大統領府を占拠してきました。共和党が政権を奪還 できる絶好の機会を目前にして、候補者が「反エスタブリッシュメント」だという理由で協力を拒み、民主党政権の続行に力を貸すのか共和党執行部の決断が求められています。

   トランプ氏の破廉恥な政策案というものも、選挙運動中の方便という見方もあるし、「地位が人をつくる」という話があるように、一たび公的な立場に立った暁には、その組織が持つ習わし、慣行、内部規則、先例とさらに政権が直面する政治的考慮や対外的約束事などの様々な拘束が直接、間接的に新しい大統領に規制をかけてきます。かつて日露戦争後にポーツマス条約を仲介したセオドア・ルーズベルト大統領が「日本人を差別するカリフォルニア州の法律や条例を何とか破棄させたかった。日本人移民に市民権を与えることも検討させた。しかし大統領にはそれを実現させる力はなかった」と渡辺惣樹氏が『アメリカの対日政策を読み解く』で記しているように、大統領府内外に反対する勢力は与野党を含めていつの時にも現実に存在するのです。2008年にオバマ大統領候補がキューバにある米軍のグアンタナモ基地にあるアル・カイダ系のテロ容疑者の収容所を閉鎖するとの公約は八年の年月が経とうとする現在においても不履行のままなのです。というわけで、実際に予備選挙中に発せられたトランプ氏の暴言や非常識な政策案が米国政府の公式な政策方針となるかどうは極めて疑問視せざるを得ないと考えます。

 一方、民主党にしても、ヒラリー・クリントン氏に対する不信感は根強いものがあり、サンダース氏に対する幅広い支持層の存在がそのことを証明しています。冒頭でトランプ氏の主張と民主党候補のサンダース氏との主張の中には共通点があることを述べました。トランプ氏の支持者には民主党側からの支持者も多くおり、民主党のサンダース支持者の多くが11月の本選挙にはクリントン氏ではなくトランプ氏支持に回る可能性が大きいと言われています。現時点での世論調査でも、トランプ支持とクリントン支持は拮抗しており、予断を許さないものなのです。

 予備選挙での投票率を見た場合、民主党投票率は減少し続けているし、反対に共和党での投票率はこれまでなかったほどに増加しているわけですから、一般有権者の投票だけで考えると、11月の選挙にはトランプ氏がクリントン候補を破る可能性は大いにあると考えます。ただ、アメリカの大統領選挙は最終的には「選挙人」による投票で決定されるものですから、一般選挙の結果とは違った結果になる可能性も僅かですが残っています。

 いずれにしてもトランプ氏が提起した日本の安全保障問題は日米関係の核心的懸案ですので、誰が次の大統領になるにしても、日本が自ら解決しなければならないものであり、日本が置かれている国際環境はこの問題を先送りすることを許さないのです。### 

フィリピン共和国アテネオ・デ・マニラ大学ロー・スクール教授。法学博士(国際法、イェール・ロースクール、‘74); 元アジア開発銀行法務局次長、1994-2002年、総裁特別顧問、2003年、業務評価局局長、2003-04;元関西学院大学総合政策学部教授、2009-13年。最近の発表された著作には “Second Thoughts on the Governing Structure of the BRICS Bank and the Asian Infrastructure Investment Bank,” 1 Ateneo Int’l L. Rev. 1 (2016); Japan: Farewell to ‘One Country Pacifism’ of August 31, 2015 in The Diplomat;Non-State Actors in International Law in Policy Perspective” in Math Noortmann et al. (eds.), Non-State Actors in International Law (Oxford, Hart Publishing, 2015) 33-561 などがあります。