2013-01-01から1年間の記事一覧

国際関係における「力」の役割

国際関係における「力」の役割 鈴木英輔 国際関係の営みというものは政治であり、マックス・ヴェーバーが云うように「権力の分け前に預かり、権力の配分関係に影響を及ぼそうとする努力」なのです(マックス・ウェーバー『職業としての政治』)。 それが対外…

内閣法制局の「集団的自衛権」の解釈とその「無謬性」の神話

内閣法制局の「集団的自衛権」の解釈とその「無謬性」の神話 鈴木英輔 日本の安全保障の政策方針と内容に対して決定的な影響力を行使するアクター(行動主体)は、対外的には米国であり、「安保条約を軸とした戦後の日米関係を根幹で規定してきた」ものは、…

ものの考え方

ものの考え方 鈴木英輔 何をするのにも、何故、何のためにするのかを考えることが大事だと私は考えます。これは政策指向というより政策志向といった方がより正確なのかもしれませんが、何の目的のために特定の行動をとるのかを考えることです。ある人が目標…

The Origin of the Territorial Dispute of the Senkaku Islands

The Origin of the Territorial Dispute of the Senkaku Islands Eisuke Suzuki The Wall Street Journal has nervously peeked out of the closet by acknowledging that “the U.S. took the Senkakus from Japan after World War II and returned them in …

誰が瀬島龍三を護ってきたのか。

誰が瀬島龍三を護ってきたのか。 鈴木英輔 『正論』の創刊40周年を記念する2013年11月号に驚嘆させる論文が載せられている。佐々淳行氏の「瀬島龍三はソ連の『協力者』だった」というものだ。ご存知のように佐々氏は第三次中曽根内閣が創設した内閣安全保障…

「武力」の解釈に対する「非武装・平和主義」の弊害

「武力」の解釈に対する「非武装・平和主義」の弊害 鈴木英輔 1.「武力」を伴わない「自衛権」と「武力行使」を伴う「自衛権」 憲法第9条第1項の「武力による威嚇又は武力の行使」という語句は、国連憲章第2条第4項の以下の規定から来ている。 「すべての加…

集団的自衛権と「一体化論」の矛盾

鈴木英輔 政府の統一見解によると、「集団的自衛権」の定義は「国際法上、国家は、集団的自衛権、すなわち、自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、実力を持って阻止する権利を有するとされている」と規定…

交戦権の否認と「自衛行動権」の問題

交戦権の否認と「自衛行動権」の問題 鈴木英輔 憲法第9条の解釈問題のうち、第1項で「武力」による自衛権を認めたことにより第2項の「交戦権」をどのように取り扱うかがもっとも困難なものだと考える。国際法上、「交戦権」という名称の国家の権利は一般的…

「自衛のための必要最小限度の実力」という欺瞞

「自衛のための必要最小限度の実力」という欺瞞 鈴木英輔 1952年の政府統一見解は「近代戦争遂行に役立つ程度」の能力をもつものが「戦力」と定義され、それ以下の能力であれば保持することは禁じられていないとするものであった。基本的には、その程度の装…

シリア危機を醸成してきたものと現在の硬直状態の理由

シリア危機を醸成してきたものと現在の硬直状態の理由 鈴木英輔 シリアはかつてのオスマン・トルコ帝国の統治下にあったのです。「帝国の統治」といっても19世紀に猛威を振るった「帝国主義」の植民地帝国とは違い、ローマ帝国、サラセン帝国や支那の帝国の…

日本の領土問題

鈴木英輔 日本語の「言語空間」から離れて、イギリスののどかな町でBBC とCNNだけでテレビのニュースを視てロンドン・タイムズ紙を読んでいると、ひと昔まえ岸信介が「日本の新聞は本当のことを書かないから読まない!」と記者会見で怒っていたのを思い出し…

集団的自衛権 と「自衛のため」:政府見解の問題点

集団的自衛権と「自衛のため」:政府見解の問題点 鈴木英輔 昨今の集団的自衛権の論議は、かねてから言い尽くされた議論の蒸し返しで、なんら建設的な意見が出て来ません。その理由は、「自国」と「他国」という二元論にたつ今までの政府の「集団的自衛権」…

日本国憲法の「平和主義」

日本国憲法の「平和主義」 鈴木英輔 まず憲法第9条の全文を読み直して見よう。 第9条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、 国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、 国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを…

夏目漱石の個人主義と国家主義

夏目漱石の個人主義と国家主義 鈴木英輔 夏目漱石は大正3年11月25日に学習院で講演した「私の個人主義」(夏目漱石『私の個人主義』講談社学術文庫、1978年、120頁)の中で漱石にとって「個人主義というものは、けっして俗人の考えているように国家に危険を…

スノーデン事件と「世界市民」

スノーデン事件と「世界市民」 鈴木英輔 元CIA職員であったエドワード・スノーデン氏が暴露したアメリカ政府による世界的な個人情報の監視・収集活動は、米国の同盟国や非同盟国も含め全世界に衝撃を与えた。スノーデン氏は米国を離れ、まず香港に寄留し…

国家と「世界市民」

今、流行りのグローバル・リーダーシップとか国際人とか世界市民などに興味があれば、以下の拙文をお読みください。鈴木英輔「国家と『世界市民』とグローバル・スタンダード」『総合政策研究』2013年、第43号<http://hdl.handle.net/10236/10945></http://hdl.handle.net/10236/10945>

大東亜戦争と「太平洋戦争」: GHQの言論統制と政府の不作為

大東亜戦争と「太平洋戦争」: GHQの言論統制と政府の不作為 「世界史の転換」を求めた大東亜戦争に敗れた日本は、「太平洋戦争」という勝利者の歴史観を「閉ざされた言語空間」の中で教え込まれてきたのだ。それは、勝利者にとっての歴史認識であり、敗者に…

みんなが忘れていること

みんなが忘れていること 「植民地アジアでは、インドネシアもマレーもインドシナもみなこれまで西ヨーロッパのための大きな所得生産者であった。しかもそれが生産する物質はゴム、錫、石油、ボーキサイト、晩や、キニーネなどという国際的重要性を持つ戦略物…

「正しい歴史認識」とは何か?

「正しい歴史認識」とは何か? 同じ民族間の争いであっても、その戦いの原因、戦いを遂行するための目的、その戦いが持つ意義、そして争いが終焉した後に生じた変化を踏まえた上での歴史的な評価も、それぞれの戦争の当事者は異なった歴史観や歴史認識を持っ…

橋下市長の"風俗発言"

橋下大阪市長の所謂“風俗発言”に対して不快感や女性蔑視とか人権蹂躙などと騒いている人は自分の地元にある “ソープランド” や “デリ・ヘル” サービスの前でデモをしないのか。政治家であれば “風俗サービス”を禁止する個人立法案も出せるのに。出さない理由…

世界史の転換

世界史の転換 グローバリゼーションの波がうねっている今日この頃であっても、世の中の思考の仕方、理念・原則の実践の仕方、嗜好、生活様式などは、いくら「世界は一つ」と謳歌しても一様には成らなかった。非ヨーロッパ世界の独立により高山岩男のいう「世…

藤原氏の呪縛

先週日曜日(2013年4月21日)のNHK「八重の桜」は孝明天皇の突然の崩御という訃報で「つづき」となっている。そして毒殺されたという話も呟かれた。これに関連して、関祐二『藤原氏の正体』新潮文庫、2008年、63-64頁から以下の記述を紹介したい。 「宮中の…

The Re-Making of Japan as a Normal Country

The Re-Making of Japan as a Normal Country Eisuke Suzuki Japanese Prime Minister Shinzo Abe and U.S. President Barak Obama restored the once damaged U.S.-Japan Alliance to the central foundation of the peace, security, and economic prosper…

安倍首相の戦略構想

安倍首相の戦略構想 以下のエッセイは、安倍晋三氏が首相になる数日前(2012年12月27日)にプロジェクト・シンジケートから発信したものです。本文は “Asia’s Democratic Security Diamond” という題で英語で書かれておりhttp://www.project-syndicate.o…

The Senkaku Islands and the United States

The Senkaku Islands and the United States Eisuke Suzuki The Senkaku Islands, the sovereignty of which is disputed by China and Taiwan, consist of five small islands: Uotsuri-shima, Kita-kojima, Minami-kojima, Kuba-shima, and Taisho-toh; an…

戦争と平和

戦争と平和 一般に「戦争」は「平和」との反語として理解されており、「平和」に対峙する概念と見なされている。あたかも、そのような二つの概念が別々に存在しているように考えられているようだ。一つの概念が独立して存在しているとその概念を具現化する…

一介の浪人のつぶやき

はじめまして。「定年」という「年齢差別制度」によりこの度お役ごめんになり一介の浪人になりました。そこで、新たに私もブログを始めました。これから、折を見て「一介の浪人」としての思いを日本語と英語でつぶやきますのでよろしくお願いします。まず最…